障がい者支援施設での看護師の役割:仕事の詳細やお給料面は?

障がい者支援施設で働く看護師としての日々は、医療施設とはまた違った経験をすることができます。看護師としての基本的なスキルはもちろん、精神的なサポートや個別のケア、他職種との連携が求められるため、その業務内容や役割には特別な注意が必要です。本記事では、障がい者施設での具体的な仕事内容から、その職場で感じるやりがいや直面する課題、そして看護師としての給料について深掘りします。これから障がい者支援施設でのキャリアを考えている看護師の方々には、専門的なアドバイスから、より良い職場選びの参考になることを、転職をお考えではない方には、新たな世界でのご自身の可能性を感じていただけると幸いです。

内閣府の『令和4年度障害者施策の概況(令和5年版障害者白書) 』によると、日本に住まう障がい者の総数は、令和4年度に1160.2万人に達し、身体障がい者は436万人、知的障がい者は109.4万人、精神障がい者は614.8万人となっています。これを人口千人当たりに直すと、それぞれ34人、9人、49人に相当し、全体で人口の約9.2%を占めます。2006年(平成28年)の936.6万人、2008年(平成20年)の723.8万人と比較すると、障がい者数は一貫して増加しており、今後もその傾向が続くことが予想されます。

そのため、障がい者を受け入れる施設数も増加しており、そこで働く看護師の需要も増えています。

障がいの分類方法

障がい者はその障がいの種類により大きく分けられ、それぞれ異なる支援が必要となります。知的障がいは学習、身体障がいは身体的な制約、精神障がいは精神的な部分などで、生活が難しい傾向が多く見られます。発達障がいと分類されるグループは、自閉症スペクトラム障がい(ASD)や注意欠陥・多動性障がい(ADHD)など、神経系の発育異常により支援を必要とする場合があります。

それらに加え、重度の肢体不自由と重度の知的障がいとが重複した状態を”重症心身障がい”その状態にある方々を『重症心身障がい児(者)』と呼び、医療行為など看護師からの支援を必要とする方々も多くいらっしゃいます。

これらの知識は、障がい者支援において基本的な知識なのでしっかり覚えておきましょう。

障がい者支援施設では、障がいのある方が生活スキルを身につけるための日々を過ごします。障がい者支援施設には、様々な形態があり、日中活動系や居住系のサービスを提供しています。短期入所や療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援など、多岐にわたるサービスが存在します。

これらは日常生活の援助から職業訓練、社会生活への移行支援までその支援範囲は広範にわたり、看護師はこれらのサービス提供において重要な役割を果たします。その中で看護師は医療行為によるケアはもちろん、利用者の一日の生活全般にわたって支援を行い、その他の専門職と協力しながら利用者の健康を支えています。

障がい者支援施設への転職を考える看護師のためのポイント

障がい者支援施設への転職を検討している看護師にとっては、知るべき重要なポイントがいくつかあります。施設での看護師の仕事内容、提供される医療処置の種類、利用者の特性、緊急時の対応方法、配置される看護師の数、医師による専門的な知見からの現場体制の確立など、具体的な情報を把握することが重要です。また、実際に施設を訪問し、現場の雰囲気やスタッフとの相性を確認することも転職成功の鍵となりますね。

守口市を中心に、重症心身障がい児(者)の受け入れ施設を運営するオールケア・グループでは、看護師の方に向けた職場見学を実施しております。お気軽にお問い合わせくださいませ。

障がい者支援施設における看護師の役割は多岐にわたります。健康管理はもちろん、症状に応じた医療行為や日常生活の支援まで、看護師は多職種と連携しながら幅広い業務を担います。

日常的な業務には、バイタルチェック、服薬管理、吸引・吸入・経管栄養などの医療行為や導尿などが含まれます。特に、介護福祉の業務にも関わることが多く、入浴介助や通院の付き添いなども行います。これにより、看護師は医療だけでなく、利用者の生活全般にわたる支援を行うことが求められます。

病院での勤務と比べると医療行為が少なくなりますが、その分、施設利用者と中長期に渡る支援、関係づくりから病院では経験できないことも多く、障がい者支援施設という職場は、新たな学びの場としても非常に有意義です。

利用者の日常生活支援

看護師は障がい者の日常生活を支援する中で、排泄介助、食事介助、着替えや体勢の変更なども行います。これらは基本的な業務であり、看護師だけでなく生活支援員や介護士と協力して行うことが一般的です。このような支援は、利用者ができるだけ自立した生活を送るための重要なサポートとなります。

利用者の健康管理と維持

看護師は利用者の健康を維持し、必要に応じて医師や他の専門職と協議を行います。バイタルチェック、服薬指導といった基本的な業務から、特定の行動や症状に対する適切な対応まで、看護師は利用者の健康をトータルでサポートします。

利用者の状態の観察

看護師は利用者の日々の変化に注意を払い、血圧測定や問診などを通じて健康状態を定期的にチェックします。通常と異なる様子が見られた場合は、迅速に他のスタッフや医師に報告し、適切な対応を行います。

施設での医療行為

重症心身障がい児(者)に対しては、たん吸引や経管栄養などの医療行為が必要な場合があります。障がい者施設での看護師は、これらの技術を駆使して、利用者の健康を支える重要な役割を担います。

施設内での感染症予防策

感染症の予防は施設での看護師にとって重要な責任の一つです。看護師は予防策を定期的に見直し、実施して感染リスクを最小限に抑えます。

利用者家族とのコミュニケーション

障がい者施設で働く看護師にとって、利用者のご家族とのコミュニケーションも重要です。『国家資格である看護師』として利用者のご家族との良好な関係を築くことで、スムーズな情報交換や支援の相談が可能となり、利用者のケアをさらに充実させることに繋がります。

障がい者支援施設で働く看護師には、病院勤務とは違った資質やスキルが求められます。利用者の健康を管理する重要な役割を担うため、基本的な医療スキルに加えて、障がいに関する深い知識が必要です。利用者ごとの特性やコミュニケーション方法を理解し、体調の変化を微細なサインから察知する観察力や気配りも重要です。これらは利用者の健康を適切にサポートするために不可欠な能力であり、日々のケアにおいて看護師が果たす役割を形作ります。

とはいえ、転職前に上記スキルが必須ということはありません。オールケア・グループでは、障がい者支援施設を長年運営した経験で培った生きたノウハウを元に、入社後の研修やOJTを実施しております。そのため、通常の勤務をしながら無理なく障がい者支援の知識を習得可能です。職場見学時に詳しいことをお伝えできますので、お気軽にお申し込みくださいませ。

障がい者支援施設での看護師の業務は、多くの面で病院勤務と異なります。施設利用者の日常生活全般を知ることができるため「病院勤務時代に処置をした患者さんは、実生活はこのように送っていたんだ!」という気付きも得られることでしょう。また、看護だけでなく介護や福祉に関する深い理解を培うことができ、多職種と協力しながら幅広いケアを学ぶことができます。サービス管理責任者などの研修・資格を目指し、キャリアの幅を広げることも一つの道となります。

未経験からでもOK

障がい者支援施設は、業界未経験の看護師にとっても働きやすい環境が整っています。医療行為が比較的少なく、研修制度が充実しているため、ブランクからの復職や新たな分野への挑戦がしやすいです。もちろん、障がい福祉分野の経験がある看護師は特に重宝されるため、これまでの経験を活かしながら新しい環境で成長を遂げることができます。

重篤な状態の利用者は少なめ

障がい者支援施設では、基本的に病気や怪我をしている方が多い病院とは利用者層が異なるため、状態の急変や死亡が少なく、精神的なストレスが軽減されるため、長期間にわたり安定して働くことが可能です。

各利用者に合わせた支援の提供ができる

障がい者支援施設での看護は、利用者との中長期にわたる関係を築くことが可能です。日々の接触を通じて、利用者一人ひとりの個性やニーズを深く理解し、それに応じたケアを提供することができるため、看護師としての大きなやりがいを感じることができます。

障がい者支援施設で働く看護師が直面する課題やデメリットは、医療行為の少なさ、職場環境の問題、利用者とのコミュニケーションの難しさなどが挙げられます。病院勤務に比べると医療的な技術を日常的に使用する機会が少ないため、医療技術のスキル向上は難しい傾向にあります。また、職場によっては人手不足や組織の問題が原因で働きにくい環境があることもあります。

職場環境の問題

全体的な障がい者数増加から、近年障がい者支援施設が増加していることは冒頭で述べました。そのため、違う分野から新たに参入した事業者には、障がい者支援のノウハウや理解が乏しい職場環境があることもしばしば。これにより、看護師は過剰な負担を感じることがあり、心身のストレスや疲労の蓄積に繋がります。

利用者とのコミュニケーションの難しさ

障がい者支援施設における看護師は、利用者の多様なコミュニケーション能力や特性に適応する必要があります。一部の利用者は自分の意志や状態を明確に伝えることが困難な場合も多く、その結果、勤務に慣れない看護師は利用者のニーズを的確に把握し対応することが難しくなる場合があります。

良好な職場関係の構築に課題

看護師が少人数または一人で業務を行う障がい者支援施設では、職場内での人間関係の構築が特に重要です。しかし、多忙な環境やストレスの多い状況では、職場の人間関係が悪化しやすく、これが職場離職の原因となることもあります。また、適切なコミュニケーションやサポート体制の欠如が、仕事の質や効率に影響を及ぼすことも少なくありません。

障がい者支援施設への転職を考える看護師の方は、以上の課題を職場見学などで情報収集しその職場、事業者が自分に合うかどうかをしっかりと見極めることが重要です。

障がい者支援施設での看護師の給料は施設によって大きく異なり、勤務形態や地域、施設の規模によっても変わります。一般的には、夜勤が含まれる勤務形態の方が給料は高めですので、積極的に夜勤がある事業所への勤務を希望するのも一手です。そのため、年収は300万円から500万円程度と幅広く、施設によってはボーナスやその他の手当が付くこともあります。また、非正規雇用の場合の時給は1200円から1700円が一般的ですが、これには業務の内容や資格、経験が影響しますので、しっかりと確認しましょう。

障がい者支援施設への看護師の需要は高まっており、特に重症心身障がい児(者)受け入れ施設での需要増は顕著です。施設の運営自体にもノウハウが必要なため、需要に対する施設数は不足しており、入居待ちの状態が続いている地域もあります。

このため、重症心身障がい児(者)受け入れ施設で看護師として勤務することは、社会的にも高い意義があるため、仕事にやりがいや情熱を求める方にとって理想的な職場となり得ます。この記事を読んでくださったあなたも、オールケア・グループで新たなチャレンジをしてみませんか?

参考

内閣府:令和4年度障害者施策の概況(令和5年版障害者白書)

厚生労働省:障害者の数

厚生労働省:他の主な法律における障害者等の定義 1.障害者