災害時の福祉が変わる!自然災害BCP勉強会で学んだ「餅は餅屋」のヒント

2025年12月5日(金)、オールケアあゆむで「自然災害BCP(事業継続計画)」をテーマに勉強会を開催しました。
ゲストは、BCPの専門家で大阪公立大学大学院准教授の菅野拓先生です。
今回は、菅野先生のお話から、災害時に日本の避難所がなぜ長年変わらなかったのか、そして2025年の改正でどう変わるのかをレポートします。
🌿オールケアあゆむがBCP勉強会を開いた理由
「災害時、利用者さまや地域の方々のお役に立つにはどうするか?」を考えるため、BCP勉強会を開催した私たち。
菅野先生の「餅は餅屋」(専門家に任せよう)というキーワードを軸に、災害時の「今」と「未来」をレポート。
障がい福祉の現場から、みなさまにシェアしたいと思います。
🌿避難所で雑魚寝の現実…災害時の対応はなぜ昔のまま?
世界から防災先進国とみなされている日本。
しかし災害が起きると、テレビにはいつも、避難先の冷たい体育館で雑魚寝をする被災者の姿が映し出されます。
昭和から令和まで、自然災害が起こるたびに繰り返される、そんな状況。
ビルや堤防などの「ハード面」は進化したのに、なぜ被災者のケア(ソフト面)は遅れているのでしょうか?
その理由は、「支援の担い手」にあると指摘する菅野先生。

災害時は、普段から人々の生活を支える民間のプロではなく、専門外の自治体職員がすべてを担うと決められているからだそうです。
🌿日本の災害支援はなぜ、自治体がメインなのか?
この構造は、1947年の「災害救助法」にルーツがあります。
「民間に頼らず自治体中心で対応する」を基本に作られた法律ですが、現代には合わないと考えられています。
なぜなら、被災者のニーズが多様化し、障がい者や高齢者など専門的なケアが必要な方々が増えている現代、自治体職員だけで対応するのは限界があるのです。
例えば食事の支援です。
嚥下(飲み込み)が弱い方や食事制限がある方の食事は、専門知識がないと対応できません。

住宅支援も同じで、自治体は公営住宅の知識はあるものの、民間の賃貸物件のノウハウは少ないのが事実。
建物の被害判定も、専門家でないと正しくできないリスクがあります。
だからこそ、菅野先生は「現場の実務は『餅は餅屋』、民間のプロに任せよう」と強調。
物流や社会保障の手続きも、行政が財源を担いつつ、民間が活躍できる仕組みが必要だと言います。
私たちは、普段から利用者さまの生活を近くで見ているため、深く共感しました。
🌿災害関連死の多くが防げたかも? 福祉の視点が不足していた事実
もっと深刻なのは、災害支援に「医療」はあっても「福祉」の視点が欠けていたことです。
その一例をご紹介しましょう。
災害時、障がい者や高齢者の方々が、避難生活の疲労やストレスで亡くなる「災害関連死」が増えています。
2024年の能登半島地震では、死者の6割に近い方々が災害関連死だったともいわれているそうです。

自ら声を上げにくい人こそ、優先的に守るべきなのに、法律が現実に追いついていなかったのです。
こんな悲劇が生まれた理由は、平時は介護保険法などで民間のプロが手厚く支えているのに、災害時は「別枠」になって、自治体が主体の、物資中心の支援に変わってしまうためです。
この現状に対し、菅野先生は「日本の自治体職員さんは非常に優秀ですが、やはり民間のプロにはかなわない。災害時こそプロに任せるべきなんです」と、長年、改善すべきだと声を上げ続けてこられました。
🌿変化の兆し!法律の改正案で、民間のプロが活躍しやすくなる
しかし、ついに嬉しいニュースが!
「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」が2025年5月28日に成立し、状況がようやく変わり始めたのです。
さらに2025年6月には、菅野先生が長年推し進めてこられた「災害救助法」の改正も行われ、救助の種類として『福祉サービスの提供』が新たに規定されました。
これまでは「物資」が中心だった救助に、法律レベルで「福祉」が明確に位置づけられたことになります。
法改正を受けて始まった取り組みの中で、特に画期的なのが、「被災者援護協力団体の登録制度」の創設です。
普段から、自治体と民間団体との間で「顔の見える」関係づくりを促進し、災害の発生直後からきめ細かく、 質の高い被災者支援を実現することが目的です。

自治体が、登録した民間団体に配慮の必要な方々の情報を共有しやすくなり、実費も公費でカバーされることに。
これで、個人情報の扱いや費用のハードルが大きく下がり、民間のプロが支援に参加しやすくなりました。
🌿スムーズな支援につながる「受援力」「フェーズフリー」って?
菅野先生は、この改正を活かすために、「受援力」(支援を上手に受け入れる力)と「フェーズフリー」(平時も災害時も区別なく使える視点)を大事にすべき、と言葉に力を込めます。
例えば、DMAT(災害派遣医療チーム)やDWAT(災害派遣福祉チーム)が避難の現場に着いた時、「何が足りないか」を正確に伝える準備をしておくことも、受援力の1つ。
普段から発電機の燃料タイプ(ガソリンか灯油か)や、医療機器のメーカー番号を整理しておけば、いざという時、スピーディーにケアが必要な方の命を守れるのです。

また、「フェーズフリー」とは、モノやコトを「平時用」「災害用」と区切り(フェーズ)をつけて使うのではなく、どんな時でも使えるようにする考え方のこと。
具体的には、モバイルバッテリーや電気自動車、防災設計の公園などがあてはまります。
最後に、先生は「これからは『場所の回復』ではなく『人の生活を取り戻す』支援へ。DWATのような福祉のプロを増やして、『餅は餅屋』の仕組みを作っていくことが必要です」と締めくくりました。
🌿オールケアあゆむが今後、やっていくこと
制度が変わった今、専門家をお招きしてBCPを学ぶという取り組みを通して、地域の「防災の要」としてみなさんの命を守りたい、という思いを新たにした私たち。


障がい福祉のプロフェッショナルとして、責任と役割の大きさを再確認した勉強会でした。
みなさんも、災害時の備えについて見直してみませんか?



